minnesotakkoの日記

国際遠距離介護の記録

ハハとピアノ

ハハは音大のピアノ科を卒業している。卒業後は就職せずに出張レッスンをしてから、チチと結婚した。結婚後は近所の子供達にピアノを教えてたりもしていた。

だが、ムスメとムスコが生まれて、義理の両親と同居したりして、ピアノは教えていたけれど、自分のための練習はできなかったのだろう。

チチの転勤で東京を離れるのを機に、ピアノには全く触れなくなってしまったのだ。

 

だから楽譜は読める。でも弾いていない期間が長ったから指は上手く動かないし、レパートリーは少ない。暗譜で弾けるのはエリーゼのためにだけだ。音大出身だから、自分が下手なのはよく分かる。だから弾いたって下手なばっかりで面白くない、という悪循環に陥っている。

 

ここにハハの不幸があるのだなあ、とムスメは思う。

なまじ音大出身な為に、耳が肥えているから自分のピアノに満足できないのだ。好きで弾いているだけだったら、批判的にならずに好きな曲だけ楽しく弾けるのに。

加えて、ハハは空気を読むのだ。デイホームでピアノを弾かせてもらえる時があるとかつてハハは言っていたが、「私が弾くと他の利用者さんが嫉妬するの。女の嫉妬は嫌なものよ」とも言っていた。

 

ムスコがお金の管理していることは理解できないのに、利用者さんが嫉妬している(事実かどうかは確認のしようがないのだが)という複雑な感情は感じることができるのだ。ハハの被害妄想だと言ってしまうこともできるけれど。

 

よい成績のためでなく、競争するのではなく、自分だけの楽しみのためにハハがピアノを弾ける日がくればいいと思う。