ムスメ、ハハの話しをひたすら聞く
ハハはとにかく話しがしたいらしい。昨日聞いた話しをひたすら聞いた。
話せば話すほど孤独という水脈があふれていくようだった。すると今まで底に落ちていた色々なものが、孤独という液体を与えられて水面に浮きあがり始めた。
チチが連れて行ってくれた釣りの蛍光オレンジの浮きをムスメは思い出していた。
どんなに強く引っ張って水面下に沈めようとしても、ぷいっと浮きは水面にあがってくる。いくつもいくつも浮きが上がってきた。
昔親切にしてあげた人が自分に冷たくする、これだけ親切にしているのに感謝された覚えがない、チチにあれだけ世話になったのに見舞いに一度も来ない、昔仲良くしていた仲間に入れてもらえない等々
ハハの執着が嫌なところにでてしまった。人のためにお節介を焼くくせに、感謝という見返りを要求するのは昔からハハの悪い癖だとムスメは思う。手作り菓子をたくさん作ってプレゼントしたのにお礼を言われなかったといって怒るハハをみて、だったらやらなきゃいいのに、とムスメは思って育ってきた。
年齢を重ねてますますその傾向が強くなったのか、我儘に抑制がきかなくなったのか。どうなっているんだろう。