ムスメ、ハハと再会する
急いで実家に戻ると、ハハは起きて待っていた。会うのは1年ぶりだ。
趣味の茶道での一大イベントでの責任から解放されて、すっきりとした顔をしていた。ビールを飲みながらハハの近況報告を聞くことにした。ハハの友人のこと、茶道のこと、ハハの兄弟のこと、チチのこと・・・・話題は尽きない。
話しを聞いていて気づいたのは、どの話題にしても根底にあるのが、「一人で寂しい」という巨大な感情ならしい、ということだった。ムスコの嫁から電話がかかってこないのも、孫の顔が見られないのも、友人と会って一人の家に帰るのも、すべて寂しいのだ。さらに友人が長居して帰らないのをうざったく思いながらも寂しいのだ。
ふーんそうなんだ、とムスメは思う。ムスコは18歳で、ムスメは24歳で家を出た。チチが老人ホームに入居して5年になるのに、去年はこんなに寂しがってはいなかった。
これが、うつ病の症状なのか?
まるでうつ病が「孤独」という名の地下水脈を掘り当ててしまったかのようだ。孤独が常に湧き出てきて、すべてを孤独浸しにしているようだった。
それでも、ムスコの言う「人の悪口ばっかり言うし、ひがみっぽい」ということは見受けられない。何かを見逃しているのか?とムスメは疑問に思う。