minnesotakkoの日記

国際遠距離介護の記録

ハハの老人ホーム体験入居 5日目

ハハに電話をしたら、ちょうど自室にいた。

元気かどうか尋ねたら、食事がちゃんと出るし色々なレクリエーションがあって、今朝は体操教室があって午後からはブレスレット作りだそうだ、ないものはないのだけれど(つまりは足りないものはないけれど、拡大解釈すれば大きな不満はないけれど)心から満足できるものでもないと言っていた。

 

まあ、あのハハを満足させることができる人がこの世にいたら会ってみたいものだと常々思っているムスメにしてみれば、この施設のスタッフのみなさんには頭が下がる。今すぐ帰りたいとも言っていなかったし、体験入居としては成功といえるのではないだろうか。

 

チチの入院先が自宅よりも老人ホームからの方が近いので、このままもう少し体験入居期間を延長できるかどうか可能性を探りたかったが、どうやらムスコが迎えに来るのを心待ちにしているような口ぶりだった。あと2−3泊だから我慢できるといったところだろうか。

 

これから午後のレクリエーションだと施設の人が自室まで声をかけてくれたのが聞こえた。それに応えてハハはムスメに

 

今ね生協の旅行でどこかに来てるのよ。これから何かあるみたいだからもう行くね

 

と言った。

 

何がどうなって体験入居が生協の旅行になってしまったのかは分からない。だが、体験入居後、自宅で独居するのは益々難しい予感がした。

 

ハハの体験入居 4日目 チチの入院

チチは誤嚥性肺炎と診断された。入院は今回は長くなりそうだと主治医に言われたそうだ。

 

ハハは自身も慣れない老人ホームから見舞いに来ていることもあり、多少混乱していた。誰が誰に連絡をして、誰が病院に向かっているかなどは全く把握できておらず、ハハは頭が狂っちゃったと言っていた。

 

狂ったんじゃなくて、混乱しているだけだから。

 

と言うのが精一杯のムスメだった。

 

老親を日本に残し渡米したことは後悔していないし、覚悟を決めてはいたけれど、やはり何もできないことは歯がゆいものだ。

ハハの老人ホーム体験入居 4日目

日本が朝になるのを待ってムスメは携帯に電話をしたのだが、不在だった。

朝食後またマージャンかなと思い、数時間してかけなおした。

 

電話に出たハハが今東京に来てるの?と聞く。

いやいやアメリカだよと言うと、今病院に来てて詳しいことは看護師さんに聞いてと

言われた。

 

チチが病院で受診中だと言う。胸部レントゲンをとって医師の診断待ちだと言う。

おそらく肺炎だろうと素人でも推測できた。

 

電話口のハハはとても気丈だった。私がついてるから、大丈夫だからと繰り返し言っていた。ハハの体験入居先とチチの病院がたまたま近くでラッキーだったとも言っていた。

ハハの老人ホーム体験入居 3日目

ムスメはハハの体験入居2日目が楽しい時間だったと安心していた。

がムスコは全く別の体験をしていた。ハハから数十回電話がかかってきたのだという。

用件は、当然だが、ただ一つ。家に帰りたい、だ。

私には老人ホームは早すぎると主張したそうだ。

 

仕事しながらハハからの電話攻撃を受けるのは、さぞかし辛かっただろうと思う。

 

だが、ハハには慣れてもらえねばならない。幼稚園デビューで一週間泣き通したムスメのハハである。ここは心を鬼にして、老人ホームから連絡があるまでは何とか体験入居を続けてほしいと思う。

 

人が歳を取るのは大変なことだ。ハハが老人ホームにいても自宅にいても、ハハ、ムスメ、ムスコ、ムスコの配偶者、の全員が不幸なのだ。そして、仮に全員が仕事を辞め、キャリアを諦め、家庭を犠牲にしてもハハを幸せにすることができないのだ。一体、どうしたらよいのだろう?

 

 

 

 

ハハの老人ホーム体験入居 2日目

ムスメは恐る恐る電話してみた。電話口で罵倒されるのは覚悟していたからだ。

 

なんでこんな所に連れて来たのよ!死んでやる!

 

くらい言われても仕方がないと思っていたからだ。

 

電話に出たハハは麻雀の最中だと楽しそうだった。

もともと社交的で楽しいことが好きなハハである。快適で楽しい暮らしが自宅外にあると体験してくれればとムスメは切に願う。

 

ハハ、体験入居に行く

前日まで行くと言ったり、行かないとゴネたり、大変だったらしい。見つからない銀行のキャッシュカードを探しに来たムスコは、銀行通帳とキャッシュカードをタンスと床の隙間に隠してあるのを探し当てた天才である。うまく誘い出して車に乗せて、無事に体験入居させた。

 

いつでも帰りたくなったら帰って来られるから

 

と伝えるといいとケアマネさんに教えてもらったという。

 

ムスコが訪ねた日は、暑い暑いと言いながら電気毛布をつけてクーラーをかけていたそうだ(リモコンが見つかっただけ上出来なのだが)。ヘルパーを頑なに拒むならば、独居は困難に満ちている。

快適な暮らしが自宅以外にもあるという選択肢を理解してくれればよいのだが。

 

 

 

ハハの本音

台風が心配で電話したが、それほど困っていないようだった。

が、銀行のキャッシュカードが見つからなくて、現金が手元に全くないのだと言う。

冷蔵庫の中の有り合わせで昼食を食べているところだった。

 

いつもの引き出しに銀行通帳やカードがないから、ムスコが勝手に黙って持ち去ったのだろうと怒って電話したら、ムスコは持って帰っていないと言われて、ショックだったらしい。

 

もう頭が全然ダメになっちゃって、どうしたらいいか分からない、と言うので体験入居に気軽な気持ちで行ってきたらいいよ、と言ってみた。ちょっと気弱になっているから話しが通じるかと思ったのだが、甘かった。

行きたくないの一点張りで、ムスコと嫁への悪口が続々と出てきて止まらない。

 

でも、一人で寂しいってよく言ってるじゃない?一日中誰とも口をきかない日もあるって言ってなかったっけ?とムスメが水を向けると思わぬ答えが返ってきた。

 

施設に行けば周囲の人に気を使わなければならないのが嫌だ、ここで一人で気楽に暮らしたい。嫁がご機嫌伺いの電話を一本よこせばすむ話しで、好きな時に寝て、好きな時に好きな物食べて暮らしたい、と言うのだ。

 

ムスメに対する強がりなのかもしれないが、寂しくないのだ。

これはムスコ夫婦に対する当て付けなのだ。

 

同居して義理の両親の介護を一手に負わされた15年は決して消えないのだ。

 

何を言っても無駄だ、とムスメは悟った。

仮にムスコ家族と同居しても、不平不満で溢れかえるに決まっている。全てを犠牲にして義理の両親を公的支援なしで介護した過去は何を以ってしても戻っては来ないからだ。

 

自分の人生を奪われたように、ムスコや嫁の人生を奪いたいのかと言いたいのをグッとこらえたムスメであった。