minnesotakkoの日記

国際遠距離介護の記録

ハハの老人ホーム体験入居 4日目

日本が朝になるのを待ってムスメは携帯に電話をしたのだが、不在だった。

朝食後またマージャンかなと思い、数時間してかけなおした。

 

電話に出たハハが今東京に来てるの?と聞く。

いやいやアメリカだよと言うと、今病院に来てて詳しいことは看護師さんに聞いてと

言われた。

 

チチが病院で受診中だと言う。胸部レントゲンをとって医師の診断待ちだと言う。

おそらく肺炎だろうと素人でも推測できた。

 

電話口のハハはとても気丈だった。私がついてるから、大丈夫だからと繰り返し言っていた。ハハの体験入居先とチチの病院がたまたま近くでラッキーだったとも言っていた。

ハハの老人ホーム体験入居 3日目

ムスメはハハの体験入居2日目が楽しい時間だったと安心していた。

がムスコは全く別の体験をしていた。ハハから数十回電話がかかってきたのだという。

用件は、当然だが、ただ一つ。家に帰りたい、だ。

私には老人ホームは早すぎると主張したそうだ。

 

仕事しながらハハからの電話攻撃を受けるのは、さぞかし辛かっただろうと思う。

 

だが、ハハには慣れてもらえねばならない。幼稚園デビューで一週間泣き通したムスメのハハである。ここは心を鬼にして、老人ホームから連絡があるまでは何とか体験入居を続けてほしいと思う。

 

人が歳を取るのは大変なことだ。ハハが老人ホームにいても自宅にいても、ハハ、ムスメ、ムスコ、ムスコの配偶者、の全員が不幸なのだ。そして、仮に全員が仕事を辞め、キャリアを諦め、家庭を犠牲にしてもハハを幸せにすることができないのだ。一体、どうしたらよいのだろう?

 

 

 

 

ハハの老人ホーム体験入居 2日目

ムスメは恐る恐る電話してみた。電話口で罵倒されるのは覚悟していたからだ。

 

なんでこんな所に連れて来たのよ!死んでやる!

 

くらい言われても仕方がないと思っていたからだ。

 

電話に出たハハは麻雀の最中だと楽しそうだった。

もともと社交的で楽しいことが好きなハハである。快適で楽しい暮らしが自宅外にあると体験してくれればとムスメは切に願う。

 

ハハ、体験入居に行く

前日まで行くと言ったり、行かないとゴネたり、大変だったらしい。見つからない銀行のキャッシュカードを探しに来たムスコは、銀行通帳とキャッシュカードをタンスと床の隙間に隠してあるのを探し当てた天才である。うまく誘い出して車に乗せて、無事に体験入居させた。

 

いつでも帰りたくなったら帰って来られるから

 

と伝えるといいとケアマネさんに教えてもらったという。

 

ムスコが訪ねた日は、暑い暑いと言いながら電気毛布をつけてクーラーをかけていたそうだ(リモコンが見つかっただけ上出来なのだが)。ヘルパーを頑なに拒むならば、独居は困難に満ちている。

快適な暮らしが自宅以外にもあるという選択肢を理解してくれればよいのだが。

 

 

 

ハハの本音

台風が心配で電話したが、それほど困っていないようだった。

が、銀行のキャッシュカードが見つからなくて、現金が手元に全くないのだと言う。

冷蔵庫の中の有り合わせで昼食を食べているところだった。

 

いつもの引き出しに銀行通帳やカードがないから、ムスコが勝手に黙って持ち去ったのだろうと怒って電話したら、ムスコは持って帰っていないと言われて、ショックだったらしい。

 

もう頭が全然ダメになっちゃって、どうしたらいいか分からない、と言うので体験入居に気軽な気持ちで行ってきたらいいよ、と言ってみた。ちょっと気弱になっているから話しが通じるかと思ったのだが、甘かった。

行きたくないの一点張りで、ムスコと嫁への悪口が続々と出てきて止まらない。

 

でも、一人で寂しいってよく言ってるじゃない?一日中誰とも口をきかない日もあるって言ってなかったっけ?とムスメが水を向けると思わぬ答えが返ってきた。

 

施設に行けば周囲の人に気を使わなければならないのが嫌だ、ここで一人で気楽に暮らしたい。嫁がご機嫌伺いの電話を一本よこせばすむ話しで、好きな時に寝て、好きな時に好きな物食べて暮らしたい、と言うのだ。

 

ムスメに対する強がりなのかもしれないが、寂しくないのだ。

これはムスコ夫婦に対する当て付けなのだ。

 

同居して義理の両親の介護を一手に負わされた15年は決して消えないのだ。

 

何を言っても無駄だ、とムスメは悟った。

仮にムスコ家族と同居しても、不平不満で溢れかえるに決まっている。全てを犠牲にして義理の両親を公的支援なしで介護した過去は何を以ってしても戻っては来ないからだ。

 

自分の人生を奪われたように、ムスコや嫁の人生を奪いたいのかと言いたいのをグッとこらえたムスメであった。

 

 

ハハ、デイホームを変える

ハハのデイホームがムスコの計らいで変更になった。

 

隣の区のデイホームなので、ケアマネさんには圏外の施設だったが、一日ステイできて昼食が出る。しかも、以前チチがお世話になっていた施設で、施設長がムスコの同級生のご母堂というご縁に恵まれた。

 

ハハによると、午前中はまったりとそれぞれが新聞など読んで過ごしてから昼食、午後は麻雀だそうだ。昼食が全て施設で手作りされていてとても美味しいらしい。ピアノがあってコーラスの伴奏など弾かせてもらっていると楽しそうだった。

 

ここに週5日通えれば、老人ホームに入居せずともやっていけるのではないか?という考えがムスメの頭をよぎったが、たとえ週5日通っても、帰宅後は再びリモコン・銀行通帳を探し続け、夕飯を作れない生活が待っているのだと考え直した。

まずは体験入居後、見極めが必要だ。

 

 

ハハと麻雀

電話したら弾むような声でハハが、今難しい局面だからね、と言う。

 

ああ中国語なのね、とムスメが返す。

じゃあ後でまたかけるからと言って電話を切った。

 

月に1度の兄弟姉妹で集まって中国語の勉強と称して雀卓を囲っているのだ。

思うに麻雀とは偉大な発明だ。チェス、将棋や囲碁は差し向かいの2人だが、麻雀は4人必要なのだ。当然、コミュニケーションの幅も広がるし、頭の体操、手先の運動にもなる。近所の地区会館でも麻雀は人気のアクティビティなんだそうだ。4人集まっても麻雀を中心に話も進むだろうし、一緒に何か食べるだろうし、何より楽しいし、言うことなしである。

 

楽しいことがあれば、ハハもあれだけ元気なのだ。

体験入居先でも楽しいアクティビティが用意されているとよいのだが。