ハハの妄想
ハハは相変わらずだ。ムスコ夫婦への不満が満載だ。話題をこちらから変えなければ、延々と悪口が次から次へと溢れ出て来る。毒気に当てられたかのように聞いているだけで頭痛がしてくる。
まあ、悪口言えるだけ元気だと思うようにしているが。
しかし、今日の電話は少し違った。チチの様子を聞いてみると、
「パパは私が訪ねて行くと立ち上がって色々とペラペラと喋るのよ」と言った。
チチはもう何年も話していない。一人で立ち上がれたのはもう何年も前のことだ。
ハハの混乱した頭の中では、チチはアルツハイマー発症以前の元気な姿に戻っているのだ。入院していることも理解していないのかもしれない。
願望が妄想を作り出して、現実との乖離がますます進むのだろうか。