ムスメの一時帰国最終日、ハハの帰宅14日目
ムスメのフライトは16:30だから、家を出るのは13:30だった。
ハハは見送りに来たがったが、空港から1人で帰れないだろうし、デイホームに行っていた方が気が紛れていいと思い、朝はいつも通りに送り出した。
ムスメがアメリカに帰るというのは分かっていても、普段通りにしているハハだったが、迎えに来たデイホームのスタッフが「娘さんは今日で帰っちゃうんですよね」と言った途端に泣き出した。
それからムスメはデイホームの施設長さんに電話をして、夕食の手配など細々としたことを確認して、買い出しに出掛けた。
冷蔵庫を開けた時にすぐに食べられるものをストックしておくためだ。ヨーグルトやプリン、牛乳やリンゴ、お煎餅やキャラメルなどハハの好きそうなものを選んだ。
ついでにトイレットペーパーやティッシュペーパーも補充した。
ハハの財布の中に少しばかりの現金を入れ、予備費とした。どうせすぐどこかに隠して失くなってしまうのだけれど。
部屋とトイレの掃除をして、台所のガスを止めて、ご近所に挨拶をして、ムスメは空港へと向かった。
とりあえず、老人ホームから自宅へ戻り、元の生活には戻れるだろう。毎朝、デイホームに行くことを電話で確認すれば、もう少しの間は1人で生活はできるだろう。老人ホームから出て自宅に戻っても、お金をムスコに盗られた妄想は止まらないだろうし、ムスコに対する不信感や不満や怒りはおさまらないと予想していた通りだった。
何が正しいかなんて誰にも分からない。
そう言い聞かせて、ムスメはアメリカに戻った。