ムスメの一時帰国6日目、ハハの帰宅6日目
次の日に大事な打ち合わせを控えていた。チチの遺産分割協議書に署名捺印する日である。この日は、デイホームを休み、午前中に遺産等々の事務作業を済ませ、午後は近所の物忘れ外来の診察の予約があり、夜はムスコ家族と食事をする予定になっている。
何度、翌日の予定を伝えても忘れてしまう。カレンダーに書いても、カレンダーに書いたことを忘れるし、カレンダーを見ることすら忘れてしまう。
が、「聞いていない」=「私は仲間外れにされている」=「私は馬鹿にされている」とハハに感じて欲しくないため、無駄だと知りつつ、明日の予定を伝え、カレンダーに記入させた。
今更、物忘れ外来に行くのは、証券会社に提出するためだ。
ハハが認知症であることが証券会社に知れることとなり、ハハの資金が凍結されてしまったのだ。それをムスコが動かせるようにするためには半年以内の医師の診断書が必要だからだ。
2年前に大学病院でもらった診断書にはアルツハイマー型認知症と診断されている。寛解する病気ではないのに、半年以内の診断書の提出を求められているのだ。