ハハの携帯、あわや没収の危機
ハハはムスコに電話もメールもしていないとムスメに言う。
あの子は忙しいから迷惑にならないようにしようと思って、と殊勝なことを言っているが、現実は真逆だった。
ムスコの携帯には5分おきに着信履歴があり、ムスコを人殺しと詰るメールが10分おきに送信されていた。
ムスコは携帯を没収すると怒りが抑えきれないようだった。
まあ、気持ちはわかる。元々ワガママなハハである。認知症がワガママに拍車をかけた。それは認める。
が、帰宅させるのは渋々同意したムスメも、これだけは譲れない。携帯がなければ、全ての連絡先をハハから奪うことになる。携帯電話を失くさないで操作できるうちは、ハハの交友関係を断ち切るようなことはしたくない。それでなくても、ハハの交友関係はどんどん狭まっていくのだ。ハハの友人だって歳をとっていくし、ハハの言動についていけない友人達は離れて行ったのだ。
元々社交的で人と繋がっていたいハハである。携帯電話なしで暮らす事はできないだろう。自宅に戻るとなればなおさらだ。