ムスメよ、自分の人生を生きよ
タイトル通りだったら、格好が付くけれど、現実はほど遠い。
だが、このようなことをハハから言われた。
私はもう老人ホームに厄介払いされるような必要のない人間なのだから、私のことは心配せずに自分の人生を生きなさいと。
母親が若いうちにきちんと対決しなさい、と言ったのは上野千鶴子氏だった。私は対決を避けて家を出た。ハハの人生を生きたくなかったからだ。ピアニスト、安定したサラリーマンか医者との結婚、可愛い孫、母娘二人で楽しむ食事や買い物、そして介護ヘルパーとハハから求められたものは尽く私に提供できるものではなかった。いつでも何かを期待されるのには辟易していた。口汚く喧嘩したことだって一度や二度ではない。
そのハハから一番聞きたかったのは、そう自分の人生を生きなさいという言葉だった。
ああ、認知症になる前にそれを聞きたかった。
まあ、言われても言われなくても、ハハの望んだムスメにはなり得なかったのだけど。