ムスメの一時帰国 6日目 ハハとフレンチトースト
ハハの冷蔵庫はついに綺麗になった。料理をしなくなったからだ。
デイホームで昼食を食べ、夕食のお弁当をもらって帰宅後それを食べる、という習慣が確立していた。
帰国中はムスメが朝食の準備をした。冷蔵庫には調味料以外何もなかったが、冷凍庫にはパンが沢山あったので、前夜から解凍したものをフレンチトーストにして食べることにした。卵液にパンをつけておいたら、ハハがそれを焼くと言うではないか。
バターで焼いてと頼んでバターを渡した。
さすがは50年の主婦歴である。焼き上がりは完璧だった。
冷凍してあるパンを解凍してフレンチトーストにするというアイディアは思いつかなくても、目の前に焼くべくフレンチトーストがあれば焼けるのだ。
老人ホームの体験入居がつまらなかったと言うハハだが、それこそ三食昼寝入浴つきである。もちろん、老人ホームでは各種様々な活動があり、ハハをいつでも部屋から引っ張り出してくれたに違いないのだが、フレンチトーストを作り、焼きたてを誰かと食べる、と言うささやかな体験が得られないのだろうと推察できた。本来ならばグループホームのように利用者ができることはなるべく自分でするような施設の方が、今のハハには良いのかもしれない。が、要介護2で入所できるところはほとんどないだろうし、年齢的にも周囲の利用者と馴染めないだろう。
認知症のレベルとしては今が最も難しいかもしれない。本人も周囲の家族も。
出来なくなった事とまだ出来ることのギャップが大きすぎるのだ。