ハハ、ヘルパーを断る
当初は週に一度ヘルパー訪問を受ける予定だった。
他人を家に入れることに慣れて欲しかったというのはムスメのたくらみだった。ムスコとの同居は現実的でないし、ムスメが帰国して(百歩譲って)同居したとしても働かなくてはならない。いつでも家族がいて介護するという状況にはできないからだ。
日常生活をみていると、掃除は辛くなってきたようだった。以前は家中はたきをかけ、掃除機をかけ、拭き掃除で仕上げていたハハも、さすがに拭き掃除はしんどくなったようだし、目も悪くなってきたのか、ホコリが目立つようになっていた。
週に一度から他人を家に入れることに慣れ、ついでに家も綺麗になれば、少しは気が晴れるかと思い、ムスメとしては名案だと思っていた。
が、今年一杯はヘルパーを断ったと言うではないか。
理由は、「人が来るとうっとうしいから」だそうだ。
それだけ元気だということでもあるので、よしとしなければならないのは分かっているのだが、ムスメとしては面白くない。
他人が来て、自分のしてもらいたいことを伝える練習はできなくなってしまった。
絶好の機会だと思ったのに残念だ。
家族であれば、掃除の仕方も、食器の仕舞い場所も説明せずにすむ。が、ヘルパーであればそうはいかない。何をどう掃除して欲しいと一から説明しなければならない。毎回違うヘルパーが来るとなればなおさらだ。それがうっとうしいのはよく分かるのだが、そこを何とか克服して、快適で自立した独居老人になってもらいたかったのだ。
ムスメが勝手にハハに期待していたのだ。それはハハがムスメに同居して介護してもらいたいと勝手に期待していたのと同じだ。