minnesotakkoの日記

国際遠距離介護の記録

ムスメ、泣く

ムスメの一時帰国も残すところ1日となった。明日の夕方には空港へ行かなければならない。諸々の用事を済ませ帰宅すると、ハハも帰宅したところだった。

とても楽しい買い物ができたのだと言い、3つのゴムボールを嬉しそうに見せた。

 

「ね、ボールって楽しいでしょ?ほんとは20個でも買いたかったけど3つで我慢したの」

 

アンパンマンのキャラクターがついたピンクの20センチほどのボールだった。

 

ハハよ、孫がボール遊びを喜ぶ年齢はとっくに過ぎているんだよ。ガラクタを増やしてどうするんだよ。ボールを買っても、どれだけお金を使って買い物しても寂しさを紛らわすることができるのは一瞬なんだよ、と怒りたいのをこらえた。

 

出発の日、チチの妹(ムスメの叔母)が会いに来てくれた。空港まで見送りに来てくれるという。久々の再会を喜んだのだが、何かが違う。すべてがとてもゆっくりになっている。たくさんの荷物の中からきちんとラッピングされたものをいくつも取り出しながら、これは誰のために買ったのか忘れちゃった、とにこやかに言った。

ああ、叔母もそうなのか。叔父と電話で話した時に「ちょっと変」と言っていたのはこのことか。

 

空港への向かう電車の中で叔母は死んだ息子(ムスメの従兄)の名前を口にした。ムスメと同い年で大学生の時にバイクの事故で亡くなったのだった。「死んだって分かってるんだけど、今なにしてるのかな?って思っちゃうの。しばらくすると、そうだ死んだんだって思い出すんだけど」と言った。

 

空港に着いてハハと叔母は遠足に来た小学生のように楽しそうだった。時間が少しあったのでアイスクリームを一緒に食べた。

 

お土産を誰に買ったかは忘れても息子の死は忘れられない叔母、誰かと一緒に楽しくボール遊びがしたいハハ。

 

ゲートへ進み、セキュリティー、出国手続きを済ませるとムスメはトイレに入って泣いた。なぜ辛いことは忘れなれないんだろう。なぜ寂しさは忘れられないんだろう。